今回はテーマが舌っ足らずなので、まずは例で補足します。
例えば学校では・・・
★十分に分かっている答えなのに、どもりそうなので(恥ずかしい想いをしたくないので)「分かりません」と答える
★思い切って答えたのだが、どもりながら答えたために、「答えられた」という結果よりも、どもってしまった、そして笑われたという敗北感・劣等感の方が大きくて落ち込んだ
★黙読の段階ではすべて読める(理解できる)教科書の内容なのに、いざ、「声に出して読め」と言われると、最初のことばすら出なかったり、しどろもどろのどもりながらになってしまい笑われて、いつものように落ち込んだ
職場では・・・
★顧客の前(または電話で)で、(どもりでない人には)あたりまえに言えるはずの「自社の名前」や「自分の名前」が(なかなか)出てこない
こんなことが続き、顧客から担当の変更を求められてきた。(まともにしゃべれる人にしてください、と)
★会議やプレゼンテーションにおいて、(頭のなかでは素晴らしい内容ができあがっていても)実際にことばにだす段階ではどもってしまい(うまく)言えない、表現できない、結果として相手に伝わらない(仕事にならない)
つまり、知識や想い、そして、ことばに出すまでの準備としては十分なのに、
実際にことばに出そうとする(出す)瞬間に・・・、
言うべきことばが発語できないか、どもり特有の「すすすずずき・・・」というかたちになってしまい、情報や意見を相手にタイムリーかつ正確に伝えられないことにより、自尊心が大きく傷つけられてしまう、(学校や社会では低い評価となる)
・・・こんな毎日の繰り返しでは、どもりを持つ人の心が確実に傷つき腐ってきてしまう。
その人が本来持っている知性や想いを相手に伝えるための道具である「話すことば」が不完全なために、
学校生活(学習)や職場での仕事、家庭内での基本的なコミュニケーションに支障が出てしまい、自分の頭のなかでできあがっていることばと、相手に実際に伝わることばとのギャップに自分自身が悩み、落ち込み、自分自身をも低い評価にしてしまう。
その2
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その人が本来持っている知性や想いを相手に伝えるための道具である「話すことば」がどもりのために不完全になり、学校生活(学習)や職場での仕事、家庭内での基本的なコミュニケーションに支障が出てしまい、
「自分の頭のなかでできあがっていることば」と、「相手に実際に伝わることば」とのギャップに自分自身が悩み、落ち込み、自分自身を低い評価にしてしまう。
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このギャップこそが、どもりの悩みの中核かもしれません。
言語障害なのだから仕方ないといわれてしまってはそれまでですが、どもりを持つ人は「自分は障害者ではない」と思いがちです。
なぜならば、「家族や親しい友達との何気ない会話でも常にどもるような重い状態」の人よりも、比較的軽い人(どもりの調子に波があり、調子が良いときは短時間の会話程度ならばどもりと気づかれないことがあるが、調子が悪くなると日常のコミュニケーションにも支障が出る)が多数派だからです。
そういう人は自分のことを言語障害者ではないと思っている(思いたい)のです。
さて、どもりを持った人が様々な学校内での活動や職場での仕事のシーン、
★例えば、学校で発表する、教科書を指名されて立ち上がってひとりで読む、学内の委員会の委員として発表する・討議する、
★社内や社外の会議、顧客の前でのプレゼンテーション、仕事上のトラブルが発生し顧客にそれを説明するときなどは、その人のコミュニケーション能力の見せ所であり、仕事をする人間としての真骨頂でもあるはずです。
しかし、吃音者はそれができないか極めて苦手である、
何よりも、評価するのは学校の先生、仕事上の上司や顧客であるということから、緊張も加わり、さらにどもりがひどくなる条件が増えます。
上手に読もうとするほど、うまくプレゼンしようとするほど・・・その人の本来のどもりの症状や重さ以上に緊張感も加わり、さらに重いどもりとなって良い結果を出しません。
この繰り返しが、吃音者の人生を狂わせるのです。
我々吃音者ができることは・・
★自分たちで工夫して練習する
どもりのセルフヘルプグループのメンバーのなかの気の合う人たちとよく話し合い、苦手なこと(電話、発表、自己紹介、交渉など)を想定して、それに近い状況を再現しながらうまく切り抜ける(どもりながらもその場を切り抜ける)方法などを探していく、
公民館の部屋などは安く借りられるので、苦手な状況を再現した「サイコドラマ」を行ない、しようとしていることがどもりながらも(なんとか)できる方法を学んでいく。
参考:「吃音仲間でできること」(セルフヘルプグループの原点に戻る)、「お互いに信頼できる吃音者が集まってできること」
★悩みを共有できる親友を持つ
いつものように書いていることですが、どもりの悩みを真剣に聞いてくれる人はほとんどいない、見つかりません。(家族も含めて)
そこで、どもりのセルフヘルプグループなどに参加してひとりでよいので、何でも話し合える親友をみつけてください。
★こころの危機管理のためにホームドクターとしての精神科医や臨床心理士を持つ
これもいつものように書いていることです。
どもりの悩みは放置しておくと、うつ病などのこころの病気になることがあります。なってからでは治療に時間やお金がかかりたいへんです。
危機管理のために、日常的に気軽にかかることのできる精神科医や臨床心理士をみつけておいてください。彼らはどもりについて深い知識はありませんが、こちらから吃音者のこころについて説明すれば、彼らの専門知識をもってサポートしてくれるでしょう。