吃音による様々な不都合を人に伝えることの難しさについて(その1~2)(再掲載一部改編:初掲載は:2014年4月25日・5月12日)

その1***
 今回は、自分がどもりで苦労をしたり悩んでいることを
「親・兄弟・配偶者などの家族・親族」
「学校の先生、友人、恋人」「職場の同僚や上司」
 に伝えることの必要性、難しさ、また、注意点について考えます。
*どもりで悩んでいる当事者が小学生なのか、学生か、社会人かなど、年齢や立場によって、また、どもりの重さや症状の違いによっても伝え方やその問題点が大きく変わってきます。

★なぜ伝えるのか 
 子供の場合ならば、どもりの苦しさやどもりで困っていることを他者にわかってもらい、少しでも自分の心が救われるのと同時に、陰湿ないじめなどに遭わないように予防の意味からも、家族や先生に自分がどもりで悩んでいることを伝えておく必要があると思います。

 第三者から見て「たまに言葉がつっかえているように見える」症状でも、吃音者本人からすれば自殺を日常的に考えるような事態もあることも「あたりまえのようにあるのが」どもりの世界です。
 このようなことがわからないような「どもりに携わろうとするいろいろな分野の専門家」はいないと思いますが? 
もしもそれがわからないと「大きな間違いをすること」となり、どもりを持った人をかえって精神的に追い詰めてしまいます。

 大人の場合は職場において、どもりを持っている自分が言葉の面で「できないこと」と「できること」を上司や同僚に伝えておくことにより、自分が必要以上につらい立場に追い込まれ苦しんだり、同僚やグループとしての仕事の遂行に悪影響を与えないようにすることができます。
*それが事実上できない、つまり、ことばでテキパキと伝えることが仕事を進めるうえで極めて重要な職業においては、仕事に就く際に自分の症状をよく説明し、実際にその環境でやっていけるか話し合う必要があります。
*比較的軽いどもりの場合は特に注意が必要です。同僚や上司は吃音者がどこまでしゃべれるか(もちろんビジネストークです)把握できていないことがほとんどですので、「あいつは消極的だ、サボっている」とか「あんな電話もできないのか!」という誤解を生む結果となり、結果的にその職場に居づらくなってきます。
*いわゆる「有力者のコネ」で、会議や電話、顧客訪問でビジネストークがあたりまえに求められる職場(特に民間企業)に就職してしまった場合は精神的に追い込まれます。純粋な仕事の処理能力以前の「ことばをしゃべる」というごく基本的なところで問題があることを意識して就職活動に望まないと大変なことになります。

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その2
ある程度以上の重さのどもりを持っていることににより・・・、
★家庭内での生活(家族とのコミュニケーション)、
★日常生活での基本的なコミュニケーション(買い物をする、電話をかける、趣味のサークル活動など・・・)
★友人関係のコミュニケーション
★学校生活や職場での活動(先生やクラスメイト、同僚や上司、取引先とのコミュニケーション)、
★就職(転職)活動中のコミュニケーション、
さらに、
★どもりのセルフヘルプグループの仲間内でのコミュニケーション

 に一定程度以上の支障が生じ、結果として人生に「様々な悪影響」が出てきます。
*この場合の「ある程度以上の重さのどもり」とは、それぞれのシーンでの意思疎通に支障がることですが、第三者から見た・聴いた症状はごく軽いものでも、本人が気にしてうつ状態になり生活に支障が出ている場合も同様です。
 このあたりのことがどもりの問題を難しくしています。家族や中途半端な専門家では理解できないことが多いです。重さの異なる吃音者どうしでも誤解を生む場合が多いようです。

 様々な悪影響とは、たとえば・・・、
 子供の場合は、授業中のどもることへの恐怖心や、クラスメート(場合によっては先生からのから)のからかいやいじめにより次第にうつ状態になり成績が下がること。
 社会人の場合は、職場において、挨拶をする、電話をとる、顧客と交渉するなどのごく当たり前にすることに支障が出て、自分の仕事やチームとしての仕事を停滞させてしまうこと。結果的にその職場に居づらくなることが多いようです。

 どちらもそれぞれの人生に直接的な(場合によっては決定的な)悪影響をもたらします。

 日常的に笑われて恥をかいたり、あからさまに迷惑そうな顔をされるなどの経験を続けていくと、吃音者本人のこころが大きく傷つけられ、生きる気力をなくすこととなります。(私がそうでした)

★吃音者をサポートする側は、まずは傾聴に徹することです。(吃音者が安心して本音を言えるような下地を作る) 

 どもりについてはその原因も医学的に解明されていないので、当然、投薬や手術による根治療法はなく、確実なリハビリテーション法もありません。
 そういう現状において、やっかいなのは、実は同じどもりを持つ人のなかの「先輩」かもしれません。
自分の経験からの「治療法」「心構え」を押しつけようとする場合も少なくありません。
 たとえそれが善意から出たことばだとしても、いま悩んでいる人のこころを傷つけてしまう可能性が大いにあります。
 どもりの重さも症状も、そして生きている環境も実に様々だからです

 また「専門家」と言われる人でも、どもりについて決めつけたような見解を持っている方もやっかいな人となり得ます。
 どもりを持つ子供やおとながいる家族(親、兄弟、祖父母)、学校の先生、専門家と言われる人々、さらには同じ吃音仲間でさえもが、まず、すべきことは、
吃音者(児)の言うことにひたすら耳を傾けることです。

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