どもりによる様々な苦労を子供の頃から重ねていると、つとめて前向きを指向しているこころも次第に疲れてきて、ついには疲れ果て、心の張りが失われて否定的な感情ばかりが出てきてしまいます。
どもりだした小さな頃から思春期、そして就職くらいまでの家庭環境が劣悪ならば、学校などの外の世界での緊張やこころの疲れを家に帰ってからも癒やすことができず、場合によっては家の中でもさらにこころの緊張感を高めることとなり、遂にはうつ病などのこころの病気になってしまいます。
朝起きてから夜寝るまで(場合によっては夢の中まで)どもりによる苦労を続けることは、子供のまだ確立していない自我に与える悪影響は計り知れません。
どもりの子供のいる家庭でできることは、まずは安心できる落ち着ける環境を作ることです。
甘やかす必要はありません。むしろ質実剛健が良いでしょう。 ただ、温かい家庭が必要です。子供が安心して自由にどもれる環境といえば良いのでしょうか。
*学校の授業中に、また、友達と接するときにどもったこと(場合によっては笑われたことなど)を、子供の方から親兄弟に話せるような雰囲気があればとても良いのですが、現実は真逆な場合がほとんどです。多くの場合、家庭はどもりの悩みを話せるような雰囲気ではありません。
どもりについて具体的にアプローチしていくのはその次の段階です。
日本では10年ほど前にやっと言語聴覚士という国家資格ができたところです。
その資格にしても吃音専門のものではなく、吃音については養成する学校(専門学校、大学)でも国家試験においても多くの時間を割かないようです。
虫歯になった子供が街なかの歯医者にかかるように、どもりに精通している言語聴覚士が開業していて、子供が気軽にかかれるという環境はありません。
現在では、インターネットを使えば国内外のどもりに関する情報がそれなりに取れるようになりました。
しかしその情報は玉石混淆ですから、大学の研究者、病院に勤務する言語聴覚士に何人も何カ所も渡り歩くくらいの熱心さを持って、お子さんに合った専門家を探してください。
*お子さんが学校の「ことばの教室」に通っている場合も、学校任せにせずに自分でそのクォリティ(先生の資質、子供の満足度)をチェックしてください。
*どもりの原因は医学的に解明されていません。日本にも、ごく少数ですが、少ない研究費で恵まれない環境下でも頑張っている吃音研究者がいます。が、考え方はまちまちです。そのことを知ったうえで「専門家」に接するべきです。
*どもりの人の集まりである「どもりのセルフヘルプグループ」が主宰する相談会や行事に参加してみるのも良いことだと思います。「どもりを持ちながら生きていくということはどういうことなのか」ということが分かります。
どもりを持っているお子さんは表面的にはいくら明るく振る舞っていても、こころの中では悩んでいます。もしかしたらその小さなこころで自殺さえ意識しているかもしれません。
*「オーバーな話では」などと思わないでください。お子さんのどもりを真剣に考えて冷静に対処してください。そして、お子さんと接するときには何事もないかのように穏やかに・・・
まずは温かい家庭をつくること、そして具体的な対処が必要と思います。