大きく悩む吃音者の背後に見え隠れする「機能不全家族」 (定期的に再掲載、初掲載は2008年1月27日)

 ネット上で「私がどもりになったのは劣悪な家庭環境で育ったからだ!」というような文章を目にすることがありますが、
近頃は どもりになる原因(どもり始める原因)は、人間の発達途上での中枢神経系の何らかのトラブルらしいということが言われています。
*かつて書いた内容ですが(2013年2月20日)、アメリカが国家プロジェクトとして行なう「脳活動マップ計画」という10年がかりの巨大プロジェクトにより、どもりの原因に一歩迫れるかもしれませんね。

 そうはいっても、何かのきっかけで始まったどもりが、うつ病などのこころの病気を併発したり、また、不登校や引きこもりになるなどの深刻なものに推移していくかどうかは、幼少期から思春期までの家庭環境や学校環境に大きく左右されることは間違いないでしょう。
*「個人の気持ちの持ちよう」も大きな要素ですが、子供のころの環境は、子供自身の努力の枠を超えています。

 さて、最近、「機能不全家族」という言葉が使われるようになってきました。
*心理学にも「家族心理学」という分野ができています。

 よく言われる「アダルトチルドレン」を生み出すような家庭が「機能不全家族」ということになるのでしょう。
 親が酒を飲んで暴れる、毎日のように夫婦喧嘩を繰り返している、必要以上の権威主義、家族間の無関心、過剰なまでの親の子供への介入など・・・、
 我が子のどもりについての「無関心」、「どもる度に怒る」、「どもる度に言い直しをさせる、ゆっくり言いなさいと神経質に注意する」などもその類ですね。

 近所からみると「立派な両親が揃っていて、豪華な家もあり・・・」、
でも、「なんでも揃っているが、何もない空っぽの家庭・・・」というセリフが出てきそうな家族や家族関係のことです。
近所から見ても、明らかに異常な家庭もいくらでもあるでしょう。

 どもりをもった子供に接するときは、その背景、特に「家庭環境はどうか。親は協力的か」、「学校でのいじめはないか。先生は協力的か」などをきちんと調べていかないと、的外れなアドバイスをしてしまう可能性があります。
*親殺し子殺しの事件が起きたとき、学校でのいじめの事件が起きたときに「自治体の児童相談所の職員の会見」「教育委員会の会見」などがテレビで流れます。
その多くはお役人のおきまりのことばで「これじゃ防げないよね」思ってしまいます。冷静に考えるとスタッフの量も質も足りていないことが明白でしょう。
しかし「少ない予算と人数で頑張っている」などというのは言い訳にもなりません。体制を大幅に強化して、強制力も持たせて、問題のある家庭には早期に極力に介入できるようにしなければ悲劇は防げません。

広告

吃音をもつ子供の親ができること(再掲載一部改編:初掲載は2011年4月28日)

 いつも書いていることですが、「どもり」は実に多様です。症状も重さも人それぞれで大きく違います。

 自分のなかで、「どもること」をどのようにとらえて生きていくのか(いけるのか)。
どもることが結果として人生にどれだけ悪影響を与えるのかも、人ごとに(症状や重さごとに)大きく違ってきます。
*「どもり経験が自分にとって結果的に良いことだった」とまで言う人もいますから。

 これもまたいつも書いていますが、どもりの子供の家庭環境(精神的、経済的)が、その後の人生に大きく影響することも忘れてはいけません。

 どもっている子供の家庭が良くなければ「良い方向」に進みません。
・・・でも、こんな家庭が多いのです。

★常に夫婦喧嘩をしているような険悪な雰囲気の家庭
→どもりだけでも相当に参っているのに、こどもに余計なプレッシャーを与える

★おじいちゃんおばあちゃんと同居している場合に、孫がどもることで嫁を責めたり、聞きかじったとんちんかんな治療法(お灸?)を強制するような雰囲気

★権威主義的な雰囲気に満ちた家庭

★親兄弟がどもりを持つ身内に、「どもることくらいで悩んでいるおまえは甘い、世の中にはもっと苦労している人が大勢いる」などと言うような雰囲気、または身内の障害であるどもりに全く無関心。

*これをしなければどもりが治るということではありません。でも、学校などの外の世界でさんざん傷ついて帰った家庭がこんなふうでは、ついには心の病気になってしまいます。

 子供の頃と違って大人になれば人生は自己責任です。誰も守ってくれません。
*どもりの問題がさらに深刻になる思春期以降の吃音者に対する公的なサポートは事実上ありません。

 そのときになってどもりという「余計なこと」で必要以上の苦労しないように、どもりを持つ子供の親がしてあげられれることと言えば、子供の頃(幼少期~思春期)の環境を良くしてあげることくらいしかありません。

*もちろん、必要に応じて言語聴覚士や精神科医などに相談したり、学校のことばの教室に通う、学校でいじめを受けていないかチェックする、どもりのセルフヘルプグループに参加するなどの工夫も必要です。

 

吃音:季節の変わり目(再掲載一部改編:初掲載は2015年8月29日)

 

 子供の頃からどもりをもっていて悩んでいた私は、小学生のころくらいからは特に春から夏にかけての暖かい時期にはことばの調子が比較的良くなり、秋以降に気温が下がってくると次第に調子が悪くなり、冬には最悪の状態になるという身体感覚を持ってきました。
*風邪を引いて体調の悪いときもどもりが悪化する感覚がありました。

 暖房が必要な冬。
 寒い教室で「寒いなあ、こんな日に指名されたら余計どもってしまうなあ!」などと、いままでの経験から悪い意味でのイメージトレーニングをしてしまうのでした。実際その通りにどもりましたが・・・
 そのような状態で順番に指名されていくときなどは。もう地獄です。
*小学生のときの担任の先生は、アイスクリームの棒を受け渡すことで教科書を読む順番や発表する順番を決めていました。

 アイスクリームの棒が週末に私のところに渡り、つまり週明けに私が教科書を読むことが決まったわけです。日曜日の昼くらいから次第に不安になってきて、夜には死にたくさえなってきました。
 こんなことを思い出す秋です。

吃音:2017年の現状(再掲載一部改編:初掲載は2014年9月30日、原題は、2014年の現状)

 どもり、それも日常生活で普通に交わすコミュニケーションや、学校生活、仕事などに、明らかな支障が出るようなどもりが続いている場合は、あたりまえですが「治したい」「できるだけ軽くしたい」と思います。
*どもりでない他者からみて「どもり」とわからないくらいの軽いものでも、本人がそれを気にして人生に大きな支障が出ていると思えば、それは「重いどもり」です。その軽く見える吃音者は自殺まで意識しているかもしれないのです。
このあたりが「どもりでない人」はもちろん、「専門家といわれる人」ですらなかなか理解されない、そしてどもりを考えるときにはきわめて重要なことです。

 どもりで悩んでいる本人やどもりの子供を持つ親御さんなどは、インターネットが十分に普及したいま、スマホやPC、その他の携帯端末を使ってどもりについていろいろと調べていることと思います。

★「治してくれる・相談できる」きちんとした専門家がいる病院や公的施設はあるのか?
 吃音者本人はもちろん親御さんも、いちばん知りたいところですね。
 ネット等でいろいろと調べてもなかなかわかりません。
というか「わかりません」
*インチキ情報はいくらでも出てきます。

 調べていてそのうちに感じてくることは・・・、
相談できるしっかりとしたところ(特に思春期以降)が事実上ないということなのです。
*事実上と書いたのは、日本にそういう施設が数カ所あったとしても、たまたま近くに住んでいれば良いのですが、通える範囲にない限り、それは「ない」のと同じことだからです。
*原因がわからず確実な治療法もリハビリ法もない現在、どもりに取り組む専門家といわれる方は、それぞれ、「治していこう、軽くしていこう」という考え方をする方や、また、「無理して治そうとしないで、どもりを持ちながらも強く生きていこう」という考え方をとる方など、様々です。(対立すらしていることもあります。)
確実な治療法やリハビリ法がない現在、仕方がない面もありますが、どもりで悩んでいてどこかに相談に行きたい吃音者やどもりの子供を心配する親御さんにとっては混乱してしまうばかりです。

 考えるられるひとつの方法は、どもりの自助グループ「セルフヘルプグループ」に通うことです。
 どもりという同じ悩みを共有する人の集まりですから、どもりを意識してからいままで、どもりについて誰にも(もちろん家族にも)話すことのできなかったことが嘘のように、「どもりについて、あたりまえのことのように話せる」という開放感にはじめて出会えるかもしれません。
これは大変大きなことで、これだけで大きく救われる方もいらっしゃると思います。

 しかし、いままさにどもりで悩んでいる人でもセルフヘルプグループの存在を知らない人も多く、たとえ知っていたとしてもなかなか参加する勇気が出ないのが、どもりの特徴です。

 セルフヘルプグループにも、いままさに悩んでいる人がいまほしい答え、つまり「治したい」「軽くしたい」に確実に答えるだけのものはありません。
 場合によっては、治った・良くなったというグループ内の先輩のあまりありがたくない自己流の治療法や心構えをしつこく頂戴することになってしまい、通うのもいやになってしまうかもしれません。
 または、いま入ったばかりの自分よりもどもりが重い「古参の(先輩)」が多くいることにショックを受けるかもしれません。(ほんとうはそれらの方々の生き様から得られるものも大くあるのですがそこまではなかなか思いがいたりません。)

 セルフヘルプグループは上手に利用しましょう。
 グループ内で気の合う仲間、年齢、重さ、境遇が自分と近い仲間を見つけて、その仲間でいろいろと動いていけば良いのではないかと思います。
*自分と違う考えかたの人、年齢や境遇の違う人の考え方や生き方に触れることも参考になります。

 自分(達)でいろいろとあたってみること。
 インターネットを使えば、自宅に居ながらにして吃音に関する書籍を見つけたり、国内・海外の吃音の専門家と連絡をとることもできます。
 ネットだけで終わりにせずに、直接気になる専門家に会いに行ってみたり、本を読んでみたり、自分の通っているのとは違うグループの活動に参加してみるもの良いことではないでしょうか。

 小・中学生は、学校のことばの教室をうまく利用すると良いと思います。
 また、セルフヘルプグループが主催する子供向けの行事に参加することもたいへん良いことだと思います。

 心の危機管理をすること。
 どもりのために(いじめやからかいパワハラなどに会う)学校や会社に通えなくなってきて、ついには完全な引きこもりになったり、
就職(活動)ができない、家庭内でも家族に理解されずに孤立しているなどの場合はいや、そこまで追い込まれる前に!信頼できる精神科医を見つけて心の危機管理をしてもらいましょう。
*都道府県ごとに「精神保健福祉センター」が設置されています。どこに相談して良いかわからない場合はそこに相談するのも良いと思います。

 また、仕事の問題、家庭の問題などを抱えている場合には、市役所や保健所に相談してソーシャルワーカーに相談に乗ってもらうなどの方法をとり、自分を守っていきましょう。法律的な問題は「法テラス」に相談すると良いと思います。

吃音にも打たれ強くしなやかに生きる(再掲載一部改編:初掲載は2006年2月6日)

 どもりには調子の波があります。
 例えば・・・子供のころからどもりで苦労し、言葉では尽くせないような努力の末に(結果として)ことばの調子もよくなり(良くなったと自分では感じられ)、徐々に日常生活にも支障がないようになってきた。
*もちろんその前に、「どもりの重さの違い」という絶対的な問題があります。傍から見て軽く見えるどもりでも自分として生きるか死ぬかの問題になっている場合はいくらでもありますが、日常の簡単な会話でさえ大きくどもるほうが人生に大きく影響することはいうまでもありません。

 さて・・・、最近、電話に出ると自分の名前すらまったく言えなくなってしまった過去の自分がうそのようにしゃべれるようになってきた。
 これで、やっと、今までのどもりの苦しみからも解放され新しい人生が始まる。

 学校を卒業後、数年遅れたが、積極的な就職活動も実り、どもりであるがゆえにあえて避けてきた本来つきたかったしゃべることがメインの仕事にもなんとか就けた。
泣きたいくらいうれしい日々・・・
 しかし、そのような人にも突然、悲劇が訪れます。どもりがもとに戻るのです。
昨日まではよかったのに、今朝から言葉が出てこない。
昨日まで治っていたのに、
「何で自分だけがこんなに不幸なんだ!」
「人生を投げてしまいたい、生きていてもしょうがない、世界で一番不幸なのは私だ!」
こんな経験をしている吃音者は私だけではないでしょう

 しかし、それを乗り越えてきた吃音者には「打たれ強さ」が身につきます。
 また、自分の限界も見えてきます。
 自分の今までの仕事上のトライが自分の言語能力を超えたものであることが心からわかり、
「ここまでとことん努力しても自分はこれくらいはどもるんだね、そうだったら、これからはこう生きていこう。こんな仕事に就こう。」と

 「ある程度以上ある程度未満の重さのどもり」の人生はこんなことの繰り返しです。 少しオーバーかもしれませんが禅僧の修行に似ているかもしれません。
*もっと重い吃音者もいることも、また、ごく軽い人もいることも、「どもりは人それぞれで百人百様」ということを心に留めるべきです。また、吃音者を取り巻く環境(家庭環境・学校環境・職場環境)によっても、どもりが人生に与える悪い影響は大きく変わります。

 どもりの問題に限りませんが、年齢や経験を重ねるごとに、また年齢とは関係なくても自分の考え方を変えることにより・・・、
今までマイナスでしかないと思っていたできごとが、実は人生の重要な一部分と思えるようになるかもしれません。(耐えがたい出来事の連続にどうしようもなくなることもあるでしょう。)

 あせらず、くさらず、少しずつ、決して独りぼっちにならずに、友に愚痴をこぼしながら生きていきましょう。
*そういう話ができる友「親友」を作りましょう。

吃音で悩んでいる人が「悪者」になる現実(再掲載:初掲載は2013年5月23日)

 このブログには簡単な閲覧状況の解析ツールがついています。
 1日の閲覧数やどんなキーワードでここに来たかがわかるくらいの簡単なものですが、「どもり 親 怒る」という検索ワードで見に来てくれた例がありました。

 吃音者の私はすぐピンときます。
「どもりくらいで〇〇ができないなんて甘い」
「世の中にはもっと厳し環境で生きている人がいる」

 もしかしたらこんな言葉を親から投げつけられたのでしょうか。
*さらに程度が悪い親の場合(場合によっては学校の先生も=私が経験しました)は、どもっている我が子をからかってみたり怒る場合もあります。

 どもりは障害です。しかも医学的に原因が分かっていないので、根治療法(投薬、手術)はもちろん確実なリハビリテーション法もありません。

 言えて当たり前の自分の名前がなかなか出てこなかったりします。
例えば「エート、エート、エート、エート・・・すすすずきでですっ」という感じです。
*それでも、ある程度の時間で言えれば良い方ではないでしょうか?

 家族から、我が子が・兄弟が・孫が「どもらない」か「ごく軽いどもり」見られてしまうのは、どもりそうなことばを避けているか(比較的軽い場合)、最低限のことしか話さないからです。
*家族の前では、どもりそうな「名前や会社名」は言う必要はありませんね。

 家庭内での日常会話レベルではわからないないような軽いどもりの(に見える)場合でも、いざ学校や職場に行くと一転、「ある程度以上の重さのどもりを持つ吃音者」となる場合もいくらでもあります。
 仕事の電話や顧客との面と向かっての交渉において、自分の名前や会社名を言い出すまでしばらく時間がかかったり要件を伝えるのに必要以上に時間がかかり、それもどもりどもりということになれば、仕事にもはっきりと支障が出るでしょう。

 学校で先生から指名されるたびに、どもりながらか、最初のことばがなかなか出てこないような状況ならば、本人のこころが追い込まれることはもちろん、陰湿なからかいやいじめに会うこともまれではないでしょう。
 どもっている本人の心はいたたまれません。
*「どもりのために仕事で失敗をする」「どもりを職場で同僚・上司・顧客から指摘される、笑われる」「家庭でもどもりのことで怒られる」、こんなことが重なるとついにはうつ状態からうつ病となり自殺を考えることにもなります。

 もしもいま、こんな状況に置かれているのなら・・・、いや、追い込まれる前に、
★セルフヘルプグループなどに参加してどもりのことを遠慮なく話せる友人を作り、
★心やことばの危機管理をしてもらえるホームドクターとしての精神科医や臨床心理士、言語聴覚士をさがし、
★吃音にまつわる、家庭の問題、学校の問題、職場での問題(過度ないじめ・からかい、パワハラなど)があるならば、その解決を手伝ってくれるソーシャルワーカー、弁護士などを見つけましょう。
*職場でのトラブルなら「労働基準監督署」「弁護士会」「法テラス」、心の問題でどこに相談して良いか迷ったら各県の「精神衛生センター」の利用も考えましょう。

 自分をこれ以上追い込まないように(追い込まれないように)してください。
あなたが悪いのではなくて、ことばの障害で苦しんでいるのですから・・・

*参考:吃音児(者)へのネグレクト(無視)と虐待について(2008年9月10日)

吃音:夏休み明けの子供と自殺

 このごろ、8月末によく報道されるのは夏休み明けの子供の自殺です。
特に9月1日に集中しているとのことで、注意喚起がされています。

 悩みを持っていたりいじめを受けていたりする子供が、9月1日から「また学校に行かなければいけないこと」に耐えられずに自ら命を絶つのです。

 どもりを持った子供にとっても夏休み明けはとてもつらい、死にたくなるようなときです。
 言い換えられない内容や自分の名前など、普段からどもってしまう言葉、なかなか出てこない言葉から逃げることのできた夏休み、どもることでいじめられたり笑われることから一時的にでも逃げることのできた夏休みが終わるのです。
*もっとも、いまではネットがあり、夏休み中でもネット上でいじめられているでしょうね。

 悩んでいるのだったら、無理してまで学校の行くのはやめましょう。
学校は命をかけてまで行くところではありません。そんな必要は全くありません。

 身の回りに悩んでいることを相談できる人がいなかったら、そしてこのまま学校に行ったらおかしくなりそうだったら、とりあえず公共の図書館にでも避難しましょう。
 街のなかをふらふらするのは犯罪に巻き込まれる危険性があるのでやめましょうね。
*公共の図書館には、この時期限定で良いから、悩みを聞いてくれる相談員がいてくれると良いですね。

 電話の相談もあります(どもってもきいてくれますよ)
************************
写真
*電話番号の画像は東京新聞WEBより(2017年8月21日)より

どもる子供をもつ親が夏休みにできること(再掲載一部改編:初掲載は2014年7月22日)

今回は、どもりを持つ子供や親御さんが夏休みにできることを考えてみます。

★どもりについて親子でゆっくりと話し合う機会を持つ
 どもりを持つお子さんがいる家庭で夏休みにやってほしいことは、親子でどもりについてゆっくりと話し合うことです。

・・・といっても実はこれがいちばんの難関なのですが・・・
 授業中や友達との会話などで、「どもりによる恥ずかしい」・「屈辱的な経験」を繰り返してきた子供にとっては、
「どもりは恥ずかしいもの、あってはいけないもの」という考えがこころの中にこびりついています。

 そのような子供が自分のどもりについて話したがらないのはもちろんですが、親御さんも、どもりについて無関心か、あえて触れないことが多いのです。

 その背景には、「そのうちに治る、大きくなれば治る」などという根拠のない考えが巷にあることも影響しているのでしょうが、
自分の子供のどもりを「障害」と思いたくない親のこころが反映されているようにも思います。
*自分の子供が学校の授業中の発表や友達との会話でどもってしまい笑われたり自虐的に反応しているところを見れば(見ることができれば)考え方も違ってくるのでしょうが、その機会はまずないと思います。特に家庭では、お子さんはどもるところを極力隠しているはずです。(もちろん隠しきれないほどの重いどもりもあります。)

 お子さんの方から自分のどもりについての様々なことを気軽に話せるような家庭を作れれば、子供にとって家庭は唯一のくつろげる場所となるでしょう。

★セルフヘルプグループなどの行事に親子で参加してみる
 どもりのセルフヘルプグループでは、夏休みや冬休みなどにキャンプ形式でどもりについて考え話し合う行事があります。
こういう機会を利用してみるのも良いかと思います。
*同じ悩みを持つ子供や親御さんで友達になれればいろいろな情報も得られるでしょうし、何よりもこころが大きく救われます。

★どもりに精通している言語聴覚士や臨床心理士、精神科医などにかかってみる
 こう書きましたが、これがまた難関なのです。
*公的サポートの「大本山」は、埼玉の国立リハビリテーションセンターになるかと思います。

 どうしてかというと、お住まいの場所で、近隣で、誰が(どの病院が、大学が、研究機関などが)熱心に(こどものどもり、おとなのどもり)に取り組んでいるか?
 たとえわかったとしても、どのようにアクセスすれば良いかを調べることは大変難しいからです。
そもそも日本において、どもりに熱心に取り組んでいる施設や専門家がないに等しいことがその原因です。
*インターネットで検索してすぐ出てくる「どもりは治ります」などとうたった無資格どもり矯正所やそれに類するものは論外として。

 ネットなどを駆使して一生懸命にどもり研究者やどもりに取り組んでいる病院・言語聴覚士、またセルフヘルプグループで活躍されている方を見つけだして会いに行けば、「どもり問題の現状」を知る良い機会にはなるとは思います。
 つまり、医学的に原因が解明されていない、有効な治療方がない(わからない)現状に触れることとなします。
調べる過程で、インチキ情報がいかに多いかも知ることとなるでしょう。

吃音をもつ子供の親ができること(再掲載一部改編:初掲載は2011年4月28日)

 いつも書いていますが「どもり」は実に多様です。症状も重さも人それぞれ大きく違います。
 自分のなかで、どもることをどのようにとらえて生きていくのか(いけるのか)。
 また、どもることが結果として人生にどれだけ悪影響を与えるのかも、人ごとに大きく違います。
*「どもり経験が自分にとって結果的に良いことだった」とまで言う人もいますから。

 これもまたいつものように書いていますが、どもりの子供の家庭環境(精神的、経済的)が、その後の人生に大きく影響することも忘れてはいけません。

 どもっている子供がいる家のなかが、たとえば・・・、
★常に夫婦喧嘩をしているような険悪な雰囲気の家庭
★おじいちゃんおばあちゃんと同居している場合に、孫がどもることで嫁を責めたり、聞きかじったとんちんかんな治療法(お灸?)を強制するような雰囲気
★権威主義的な雰囲気に満ちた家庭
★親兄弟がどもりを持つ身内に「どもることくらいで悩んでいるおまえは甘い、世の中にはもっと苦労している人が大勢いる」などと言うような雰囲気
*これをしなければどもりが治るということではありません。でも、学校などの外の世界でさんざん傷ついて帰った家庭がこんなふうでは、うつ病などの心の病気になってしまいます。

 大人になれば人生は自己責任です。誰も守ってくれません。
*思春期以降の年齢の吃音者に対する公的なサポートは事実上ありません。

 そのときになってどもりという「余計なこと」で必要以上の苦労しないように、どもりを持つ子供の親がしてあげられれることと言えば、子供の頃(幼少期~思春期)の環境を良くしてあげることくらいしかありません。
*もちろん、必要に応じて、言語聴覚士や精神科医などに相談したり、学校のことばの教室に通う、(親む含めて)どもりのセルフヘルプグループに参加するなどの工夫も必要です。

吃音:親を恨むこころは・・・(再掲載一部改編:初掲載は2013年6月20日)

 私は大卒後も就職できずに引きこもってから2年近く過ぎて、20歳代半ばを過ぎてから、なんとか通うことができた民間のどもり矯正所においてはじめて、どもりという同じ悩みを持つ友を持つことができました。
 それまでは、家族にも友達にも話すことのできなかった「どもりの悩み」を、心ゆくまで話し合えるようになったときの開放感は、ことばでは表現できるものではありません。
 自分のこころのなかには、どもりに対する想いがこんなに多く詰まっていたのかと驚いたものです。
 また、こどもの頃からどもりに関する想いを無理やり自分のこころのなかに押し込んできたことが、自分のこころとからだに大きな悪影響を与えてきたことを確信し、これからも影響を与え続けるだろうことを予感しました。

 その中のひとつが、「こどもの頃からこころのなかに押し込んできた想い」
・・・「親に対する根深い恨み」でした。

 どもりの悩みは人それぞれですが、いろいろな吃音者に接するうちに、それなりの割合で「親に対する恨みの感情を持っている人」に会いました。
★こどもの頃、どもることで学校でも笑われたり、からかわれたり、いじめられたりしていたのに、そして、それを親に訴えたのに相手にされなかった
★それどころか、「どもりくらいたいしたことはない、もっと苦労している人はたくさんいる・・・」と説教をされてしまった。

 「家族にすら理解されずに苦しみのなかで生きてきた話し」を仲間から聞きました。
なかには話しながら泣き出してしまう方もいらっしゃいました。
 こどもの頃からいままで、自分のこころのなかだけで持っていて誰にも言えなかった感情が、共感して聞いてくれる人の前で話すことによりあふれ出てしまったのでしょう。

 少し冷静になって背景を考えてみます。
★親はどもりのことが分からない?
 こどもの多くは、自分のどもりを知られたくないので家庭のなかでさえも極力隠そうとします。
特に、言いにくいことばは言わないようにします。会話も最低限のものにします。

 ことばの調子の良いときにだけ話すようにすれば、親からは「だいぶ軽くなったね、良かったね!」などと頭をなでられるかもしれません。

 しかし、これでは親は、自分の子供がどもりで悩んでいることを正確に把握できません。
*学校でいじめられているにもかかわらず、家ではそのそぶりさえ見せないで、ある日突然自殺してしまうことに似ています。

ここで考えなければいけないこと・・・
★世の中にどもりに対する正確な情報がほとんどないし、気軽に相談に行ける公的な専門機関も(ほとんど)ない。

 これが致命的かも知れません。
 せめて、住んでいる市町村のなかに(日常的に気軽に通える範囲に)一カ所でも良いから、吃音に関心を持って取り組んでいる臨床心理士、言語聴覚士などがいる施設があれば、状況はだいぶ変わってくるはずです。
*学校の「言葉の教室」も、その量・質ともに問題が大きいようです。

 親を憎んでいる場合はどうすれば良いか?
★同じどもりを持つ友人(親友)を作り、いままでのことなどを打ち明けることにより、こころの中にある負荷を下げていく。
★どもりのセルフヘルプグループの会合に参加して、いろいろな立場(性別、年齢、育った環境の違いなど)の吃音者に接することにより、自分のどもりや育った環境を客観的に見てみる。
★自分のいまやこれからを充実していくことにより過去にとらわれない(とらわれにくい)ような状況に自分を持っていく。

 なんと言っても、自分のことをこぼせる信頼できる友人を(ひとりで良いので)作ることが第一だと思います。
*なんでも話せるホームドクターとしての精神科医や臨床心理士を持つことも良いことです。