吃音者の人生が結果的に良い方向に進むための心のバランスの取り方(再掲載一部改編:初掲載は2009年4月5日)

*今回は、比較的軽いどもりについてです。
私の取り上げているテーマのひとつに「どもりの重さによる違い」ということがあります。

 さて、仕事(一般的な企業での仕事)の世界で生きているときに・・・、
 「短い時間のなかで話すべき内容をてきぱきと話し合い、電話でははっきりと的確に連絡をする」というような、仕事をするうえであたりまえのことができることの重要性と、それができないかできにくい「どもりを持つ人」が抱えるジレンマについて考えてみます。

 どうして考えるかというと、
 どもりで悩んでいる人に向かって「どもっても良いじゃないか」ということがよく言われますし、私も子供の頃に何回かそんな言葉で慰められたことがあります。

 私も、今、どもりで悩んでいる人が目の前にいれば、(とりあえずは)同じような言葉で元気づけるかもしれません。
*その後、悩んでいる人がパニック状態を脱した段階で、現実的な話やいまできる対応方法などをゆっくりとお話しすると思います。

 心情的には、そうなのですが、
 では、そのどもりで悩んでいる人が仕事を探したり、仕事をする場合において・・・
「どもっていても良いじゃないか」と簡単に言ってしまっていいのか?ということになのです。
 それが、責任あるアドバイスなのか、ということなのです。

 今、どうして良いか分からないほどに混乱している人に対して、「どもっていても良いじゃないか」と言い、勇気づけることは良いことだと思います、
しかし、そのやさしい言葉に勇気づけられた人も、その場を離れるとすぐ現実の社会に放り出されて「どもりの現実」と向き合うことになります。

 人間には、働いて生活に十分なお金を稼いで自分で生きていかなければいけないという宿命があります。
*これにも当然、条件があります。障害が重く、仕事ができないか、生きていくために十分なお金を得る仕事に就けない場合には、国や自治体が責任を持って援助することが必要です。福祉ですね。

 仕事を探していても「どもり」のために面接で落とされ続けたり、やっと入った会社では、電話の応対や社内の会話などで心がぼろぼろになり、どうにかなってしまいそうな方に「どもっても良いじゃないか」とは言い難いのです。

 比較的軽いどもりを持った状態で一般の企業に入った場合には、ある人にとっては、そこでのことばの苦労が(良い条件が重なれば)結果として吃音を軽くするための大きなステップとなり得ますが(私の場合がそうでしたが、ひと言では言えない苦労をしました)、
 逆に、かえって重くなり「自分は社会では通用しないのだ!」と自己不信に陥る場合もいくらでもあるのです。
*私は転職を複数回経験しましたので、どうしても会社名が言いにくいところに就職してしまい、とんでもない苦しみも経験しました。同じような経験をした友人もいます。

★自分でお金を稼いで健康で文化的な生活を自分で作り上げていかなければいけないという現実と、
★どもりを自分のなかでどうとらえるかという心のなかの問題、

 この両者をどのようにバランスさせて「結果として」自分なりの幸せをつかむか!ということが重要なのではないかと思います。

 この「バランス」をとる手伝いをしてくれるような専門家(どもりの知識と臨床経験豊富な言語聴覚士や臨床心理士、精神科医など)が身近にいてくれて、学校や会社の帰りに気軽に寄れる、また、引きこもりになった吃音者やその家族が気軽に相談できる体制を整えていかなくてはなりません。
 それが、どもりでさんざん苦労した、ちょっと前を生きてきた人間である我々が後世に残す遺産であると思うのです。

 その際のキーワードは
「身近にあり・いつでも通えること・継続して通うことのできる環境」です。
 心やことばの問題を考えるには5年、10年という長い時間がかかることを考える必要があります。

 どもりに対するサポートは、長期にわたる計画的な心理的サポート(本人に対するサポート、家族に対するサポート)だけで足りる場合もあれば、心理的サポートプラス、言語訓練が必要になってくる場合もあると思います。
 個人の状況によりカスタマイズされたものを提供していくべきです。

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