吃音と仕事:現実を考える(再掲載一部改編:初掲載は2008年5月26日)

 ネットが発達した現在パソコンの特別なスキルがなくても、インターネットを通してどもりを持つ人の様々な経験談に触れることができる時代になりました。
 また、簡単に、自分から、情報の発信もできるようになりました。

 インターネットが一般化するまでは(1995年以前)、どもりを持っている人と知り合うには、たまたまクラスメートか同僚にどもりを持つ人がいて親しくなるか、民間のどもり矯正所に通うか(それも、授業形式で大勢が参加するようなところ)、どもりのセルフヘルプグループに参加するしかありませんでした。

 しかし、どもりで悩んでいる人にとって、矯正所に通ったりセルフヘルプグループに通うのは、ことのほか敷居が高いのです。
 矯正所やセルフヘルプグループの入り口ドアの前まではきたが入れずに、まわりをうろうろしてから結局は帰ってしまった・・・などという経験談はよく聞くものです。
 実際、私もそうでした。

 そのような方たちが、ことばに表せないような苦労をしながらも少しずつ生きる自信をつけていき「働く世界・日常の世界」に出て行くことは、どもりでない人には想像すらできないくらいの大きなストレスが伴うものです。
*人によっては、世の中に出てみたらそれほど大変ではなかったと実感される場合もあります。

 働く世界に出てみて実感するのは「働くとはお金を儲けること」だということです。(民間企業の場合)

 職場の同僚は皆、自分の仕事をこなすことで精一杯で、どもりの人がどもろうとどうしようとそんなことはどうでも良いのです。

 どもりの人によって自分の仕事に影響がでない限り、(まともな大人ならば)どもることで文句をつけてきたりはしませんが、自分の仕事に少しでも影響が出てくると、とたんに非難したり他の(どもらない人との)交代を要求するでしょう。

 そのような世の中の現実(皆、自分のことで精一杯ということ)をしっかりと把握しつつどもりについて考えていかないと、(おとなの)どもりについての議論は非現実的なものとなります。

 サラリーマンが働くような職場においては、「電話をする」「交渉する」などのことばを用いての高度なコミュニケーションは必須で、これが円滑にできないと自身の仕事に支障が出るばかりでなく、職場の仕事全体の流れを阻害します。

 そういう世界に入り込んだ「ある程度より重い」吃音者は大変な苦労をします。
 私も、大卒後すぐに就職できなかった後ろめたさと、「会社員として働かないといけない」という考えから、
そして、あえてことばを多用する職種に就いて無理をしていけば「治るだろう」という漠然とした考えから、無理して営業職につきました。

 よく、どもりの会合などで、「自分が、いかに、どもりながらも会社で耐えて努力してきたか」と大演説をぶち、教訓をたれる方がいらっしゃいますが、今の日本・これからの日本で、かつての私のように、「ひたすらに必要以上の無理をすること」が本当に必要なのでしょうか。

 1960年くらい~バブル崩壊くらいまでのように、学校を出て「会社」で働けば、ある程度以上の収入を安定的に得られた時代は終わりました。
 毎日遅くまで言われるとおりに働いていれば、定年までの職場が保証され、退職金がもらえる、「かつての日本」は、もうないのです。

 そして、高度な工業製品を外国に輸出してお金を儲ければ食料も水も買える時代が終わり、水や食料が戦略物資となり自国の食料や水が足りなくなればいくらお金を積んでも他国に売ってくれないような時代が予見されています。

 そのような背景もあり、どもりを持つ人の仕事についての考えかたを変える時期が来ているのかもしれません。
「どもりを持つ人が働くこと」=「会社に入って苦手な電話や交渉をして身を削る」、だけではないのです。

 こんなことを再確認し、忘れられていた「ものを作る」仕事に従事すべき時がきたのかもしれません。

 子供の場合でも、「どもりを持ちながら学校に行くこと自体が苦しくて、毎日が針のむしろに座らされているようで、自分がどうにかなってしまいそうだ!」くらいにまで心理的に追い込まれている場合には、無理して学校に行かずにフリースクールのようなところで心やことばの専門家のサポートを受けながら上の学校の受験資格を得られるようにしていくべきでしょう。いまはもう21世紀なのですから。

 人は幸せになるために生きているのであり、「消費し続けることが人生を豊かにし、幸せになること」という時代は確実に終わろうとしています。いや、すでに終わっているのです。

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中