吃音:心が折れないように生きる(再掲載一部改編:初掲載は2010年1月26日)

記憶の森の写真館 より

記憶の森の写真館 より

 日常生活での会話にも支障があるような、また、学業や仕事においても支障があるような重さや症状のどもりを持っていると、毎日を生きていくなかで常に大きなストレスがかかっています。
*かつて(昭和40年代はじめ頃まで)は、いわゆるサラリーマンにならなくてもいろいろな職業の選択の幅がありました。私の子供の頃(昭和40年代~50年代)くらいまでは、東京近郊の都市部に住む私の小学校の同級生には、雑貨屋の息子、金物屋の娘、肉屋の子供が少なからずいました。どもりを持っていても比較的生きやすい方法が選択できたのです。

 さて、企業などの複数以上の人間がいる組織で働いていくには、常にスタッフや取引先との(真摯な、そしてときには戦略的「狡猾」な)高度なコミュニケーションが欠かせません。
 まだ学生で本格的に働いたことがない方、また、民間企業に比べて仕事上での軋轢の少ない地方公務員などの方にはイメージしづらいかもしれませんが、「働く」ということは、「どのようにしてお金を稼ぐか常に工夫すること」と、「業務上で日常的に生じるトラブルをどのように戦略的に解決していくか」の繰り返しでもあります。

 相手を言葉で納得させる、たとえば、今までは違う会社の製品買っていた顧客に無理を承知で訪問して徐々に自分の会社の製品を買うように仕向ける、とか、自分の会社の利益を守るために本当はこちらにも責任の一端があることでもゴリ押しして自分の方に有利に持って行くこと、など、言葉を武器にして戦っていくことが要求されます。
*なぜならば、自分の組織が生き残っていかなければいけないからです。

 「私は公務員だから必要ない」と思われるかも知れません。
が、民間企業の社員、その他の仕事の方が、いろいろな矛盾に悩みながら一生懸命に働いて多額の税金を払っているからこそ国は成り立っているのです。

 このように、ストレスばかりの環境で生きていかなければならない吃音者にとっては、実につらい時代を生きているということが言えます。

 それではどうすればいいのか?
 いつも書いているように、どもりはその重さによって人生に与える影響が全く違います。「企業の事務系や営業系で働くということが働くということだ!」などという固定観念を持ってしまうと、「重い」どもりの人には決定的に不利な状況でしかなくなります。

 しかし、客観的に見た症状が軽いほとんどわからないようなどもりをもつ人でも自殺を考えるほどに悩み人生に行き詰まっている方も多くいることも忘れてはいけません。「うちの子供は軽いから大丈夫」などと思うことは大間違いです。

 世の中、生き方はいろいろですね。幸か不幸か「失われた20年」を経て経済構造が大きく変化した現在では会社員が安定した職業ではないことは明らかです。
どもりに悩んでなかなか仕事に就けない人が人生の袋小路に迷い込んでいるようでしたら、家族や友人が「違う生き方もあるよ」と声をかけてあげると良い方向に進める場合もありますのでぜひ協力してください。

 第三者からみて日常会話ではほとんどわからないような軽いどもりを持っている人が実は深く悩んでいて・・・などという場合には、成長につれていろいろと経験をしていくなかで、どもりは大幅に改善され(もともと症状は軽いので心理的に軽くなるということ)、結果的には社会の第一線でどもらない人と同じように働いていける場合もありますが、同じような客観条件でもそうでない人もいます。

 また、もともと、かなり重い症状の方が、成長につれても第三者からみた症状ではほとんど改善されていない場合でも、自分にあった職業を見つけて自分なりの生き方をしていく場合もありますし、そうでない方もいます。

 どもりのために、「死んでしまいたい」と思い詰める前に、いまの自分を客観的に見つめ直して早めに生き方を根本的に変えましょう。
子供がいて何十年のマンションのローンを組んでいる場合はちょっと厳しいかもしれませんが、
★例えば、言葉を武器にして過酷な競争下で働くような環境からは離れて、体を動かして働くことが中心の仕事へとシフトしていく。
★都会の激しい競争から離れて地方へ移り住む。

 当然現金収入は減るでしょうから今までと同じような消費生活はできませんが、どもりを原因としてうつ病になってしまい、何年も精神科に通院しなければならないような生き方よりははるかに良いでしょう。
*「悩んで精神的に追い込まれて自殺」などという最悪の事態に陥らないようにしなければいけません。

 そこまで深刻でないのならば、都会で生きていくとしても、今の仕事を続けながら自分にあった職種をゆっくりと見つけてそちらにシフトしていくのも良いと思います。
もう少し良い状態ならば、どもりのセルフヘルプグループに参加して(自分で作っても良いでしょう)どもりの辛さを分かち合う友人と交流したり、また、必要に応じて適切な言語訓練を行い仕事の環境にできるだけて適応して自分を楽にしてあげることが必要です。
 スポーツクラブ等で定期的に体を動かして発散することも、うつ病の予防としては有効なことです。

 また、どもりのこと(症状・心理的な悩み)や、どもることのより仕事や生活に問題が出ていることなどを何でも話せるホームドクター的な精神科医・臨床心理士・言語聴覚士などを持つことで、自分を「生きやすい」方向に持って行くことが必要です。

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