雇用状況の変化と吃音者(再掲載一部改編:初掲載は2006年5月14日)

 40歳代後半から上くらいの吃音者に体験談を直接聞いたり彼らの書き込みをWeb上でみると(私もこれくらいの年齢です)、
「とりあえず入社できて」、「そこでいろいろと苦労しながら徐々に慣れてきて・・・」という話しが多いのです。
*言うまでもありませんが、20年前30年前と今とでは時代背景・経済環境が決定的に違い、残念ながらそれらの話しは役に立ちません。

 この頃、新聞やTVの報道では景気の回復が盛んに伝えられていますが、一部の大企業や業界が恩恵を受けていにすぎないことは皆さんが実感されているところでしょう。

 現在の若い吃音者は、まず、正社員になるという大きな壁にあたります。
 バブル崩壊、大幅なリストラ、を経ての社員採用である現在、 どもりで電話もろくに出来なかったり名前も言えないような人の正社員としての採用は、よほど強力なコネがあるか、言葉の欠点を補って余りあるほどの専門性を持った人間でない限り厳しいといわざるを得ません。
 今の企業(日本)には余裕がないのです。

 どもりの人の多くが苦手な電話は、実際に仕事上で「かけまくって」、 最初はしどろもどろから始まって徐々になれてくるものです。
*数をこなせばどもりが軽くなる人もいれば、数をこなしても(症状で言えば)軽くならない人もいます。客観的にみて軽くなっていなくても、本人にとっては「電話ができるようになった」と感じられるようになる人もいます。

 しかし、いまでは、その「練習の場=実際の職場での試行錯誤」がなかなか与えられません。
私が中途採用ながらそれなりの規模の会社に就職できて、どもりながらも営業として働かせてもらえて、徐々に自信を付けることが出来た(80年代末~90年代初め頃の話しです)のは、「正社員としてそれなりの会社にそれなりの待遇で就職できてこそ」だったのです。

 現在はそのあたりの事情が決定的に違っています。
★学校を出ても就職できなかったどもりの若者、また、どもりで何年もフリーターとして働いている人が多い。
★卒業後きちんと入社したが、言葉の問題でやめることとなってしまってそれ以降はなかなか社会復帰できない人が多い。

 このあたりが「どもり」の問題の本質ではないでしょうか?

 これらの問題に対応するような公的な援助、たとえば、
★どもりを持っている人が初めての就職をするときや、いちどやめた後に社会復帰に向けて実践的な言語訓練を受けることができる施設
★どもることと、それにより起きる様々な問題に対応するための(訓練された臨床心理士や言語聴覚士による)カウンセリングや言語訓練を受けられる公的な施設(NPOでも良いでしょう)
などは、日本にはありません。
*いまでも、職安に行き相談員に「私はどもりなのでなるべく話さないでよい仕事を紹介してください」と頼めばそれなりに対応はしてくれるとは思いますが・・・。

 そのような現実を踏まえた上で、いま困っている吃音者ができることは(実は、我々や我々の先輩が細々と工夫して行ってきたことですが・・・)、吃音者の仲間を募り、 ここ数年くらいの間にメンバーと同じくらいの重さのどもりを持ちながらも正社員として就職できて活躍している、できれば同じくらいの年齢の方に仲間に入ってもらい、どもりで悩んでいる人が就職に挑めるような実践的かつ効果的な言語訓練を行うことです。
*どもりによって挫折しそうか挫折してしまった人たちの心理的な援助などを行うこともできます。

 ただし注意事項があります。
 これらの活動は仲間内でサークル的活動として行うことですし、カウンセリングの専門教育なども受けていない素人の集まりですから、互いに傷つけ合わないように細心の注意を払う必要があります。
できれば、定期的に、言語聴覚士や臨床心理士などの専門家にきてもらい意見を聞くと良いと思います。
参考:お互いに信頼できる吃音者が集まってできること(2012年5月13日)

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