吃音研究や臨床の現状(医学的な研究の進歩状況、公的なサポートの仕組みと問題点など)をありのままに伝えて、あとは個人の選択に任せる(再掲載一部改編:2010年10月15日)

奈良 長谷寺

奈良 長谷寺

ちいさな子供から大人まで、吃音者の年齢は様々です。
また、子供といっても、幼稚園、小学校、中学校、高校・・・と成長するにしたがって友人関係、クラブ活動、授業内容などの本人を囲む環境は大きく変わり、受験を控えているとそれだけでもストレスもかかるうえにどもりの悩みがプラスされますね。
心とカラダが成長していく大事な時期に、ある程度以上の重いどもりで大きく悩んだり苦しんだりすることは、人生に直接的・間接的な大きな影響を与えることは間違いありません。

そのようなどもりを持つ子供に接する親や各種専門家にはどのような心構えが必要でしょうか?

★、まずは、本人の「いま悩んでいること・素直な想い」を、予断をせずにひたすら傾聴することではないでしょうか。

大人が(たとえ同じ吃音者でも専門家でも)、相談に乗るときに気をつけなければいけないことは「決めつけないこと」です。
「どもりを持ちながら生きてきていろいろ経験したことを伝えたい」、または、「自分の専門領域から役に立つアドバイスをあげたい」という気持ちはよくわかりますが、それは吃音者としての自分の経験やある領域の専門家としての知見でしかありません。

★、残念ながら、どもりについては、専門家たるべき言語聴覚士の教育や臨床実習においても割かれる時間や内容はお寒い現実のようです。(特に思春期以降の対応)

ここ10年~20年の社会環境の変わり方には革命的なものがあり、結果として吃音者を取り囲む環境(家庭、学校、就職、職場)も大きく変わっていますので、吃音者の過去の経験が役に立ちにくくなっています。

吃音(経験者)の大人が、自分が経験してきてそれなりに高めてきたと考えているどもりに対する想い(哲学?)は、自分の時代や自分のケースでのことでしかないと考えるべきです。
「どもりの経験は受け継がれない」と考えておくべきでしょう。

なぜならば、医学的な治療法が確立していない現在において、「どもりに対する想い、哲学」はそれ自体では「治療法」にはならず、あくまでもどもりを持つ人が生きていく上での指針であり、「人生のなかでどもりをどのように位置づけて、試行錯誤しながら自分なりの人生を生きていくか」ということだからです。
それにより、「結果としてどもりが軽くなったり、ほとんど治ったと同じようになった」としても、それは、あくまでも「結果」なのです。

その過程を無理に類型化して、どもりを持っている子供にチャートを示すように導こうとしても、子供の自然な気持ち・自由な想いを妨げてしまうだけに終わるかもしれません。
子供は大人には逆らえませんから=特にどもりで悩んでいる子供は、「自分は大人の意見とは違う」と心のなかでは思っていても、ほとんどの場合、意見することはできないでしょう。
または、意見することをあきらめてしまい、「わかった振り」、をするかもしれません。

今の時点で、どもりは医学的にどこまでわかっていて、どこがわかっていないか。
日本ではどんな体制(病院、他の専門施設など)で子供やおとなのどもりに対応しているか、どこに問題点があるか。
どもりに対する確実な医学的治療法(投薬、手術)がなく、また、確立されたリハビリテーション方法もない現在、民間療法を含めてどんな対処、サポート方法があるかをすべて開示して、あとは、個人の選択に任せる。
*小中学生くらいまでの子供の場合には、家族を含めての、より丁寧な説明とカウンセリングなどによるサポートが必要です。

重要なことは、どもりを持った子供が悩んだり問題にぶつかったりしたときに、学校の帰りや休日に、歯医者さんにかかるような気軽さで相談に行ける街なかの言語クリニックなどを置くことです。

*アメリカなどではあたりまえのように行なわれているようですが、ひとりの言語聴覚士や一カ所の言語クリニック、ひとつの学校のことばの教室で問題を抱え込まずに、精神科医、臨床心理士、大学などの研究者などにスーパーバイザーとしてサポートしてもらうようなチームとしての体制を構築する必要があります。(どもりに精通《特に思春期以降》している言語聴覚士、精神科医、臨床心理士は少数派のようですから)

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