いま吃音で悩んでいる人とサポートする側の距離感(再掲載一部改編:2012年8月21日)

 日常生活のコミュニケーションにおいて支障が出るくらいの重さのどもりを持っていて悩んでいる人と、そういう人たちをサポートする側(親、学校の先生、言語聴覚士、臨床心理士、精神科医など)との意識(危機感、切迫感)の差について書いてみます。

 どのような問題においても当事者と当事者を取り巻く人との間には意識の差があります。
極端な例が、いま改めて問題が表面化している子供のいじめの問題です。
 いじめられている子供の切迫感と、学校側(先生・教育委員会)の意識のずれは、天と地の差以上のものですが、それを深刻な問題としてとらえて組織から根本的に変えていこうという発言すらない総理を見ていると情けなくというか切なくさえ感じてしまいます。

 話を戻します。
 どもりについても、昔から、当事者とサポートする側の距離感はありました。
私は、インターネットが一般化する1990年代後半より前にどもりの悩みのピークを迎えていました。(大卒後の就職です)

 戦前・そして戦後のすぐくらいから連綿と続いていた民間のどもり矯正所に通った最後の頃の世代としてもいろいろと経験してきました。

 80年代末くらいまではインターネットは一般化しておらず、どもりに悩んだ若者がどこに救いを求めたかというと、街なかの電信柱の貼り紙、週刊誌や漫画雑誌に載っていた小さな宣伝記事に載った、民間の無資格どもり矯正所の怪しげな宣伝です。

 あの怪しい宣伝をみて、そこに最低でも数万円~数十万円(なかには百万円単位でお金をかけた方もいたらしい)という高額な料金を払って通うことは、よほど精神的に追い詰められていないとしないでしょうが(私もそのひとりです)、当時(90年代中頃くらいまでか)、多くの吃音者が近隣からだけではなくて九州や北海道からも東京に通ったのです。
*いまではインターネットを使って巧みに宣伝されている新しい形のどもり矯正(のようなもの)が氾濫しています。敷居が低くなった分、昔以上に要注意です。

 その矯正所では、あらゆるどもり矯正がそうなように、通い出した当初は通い出したという安心感からか、少し軽くなったように思うものです。
 そこで、矯正所の「先生」に、「2回目ですが少し良くなったような気がします!」などと言ってしまうと、もう、矯正所側のペースで、その人は良くなった人のグループにカウントされてしまいます。

 民間のどもり矯正所は生活のかかった商売ですから、できるだけ多くの人を集めてこその仕事です。
もしも、どもりで悩んで来る人の立場になってひとりひとり丁寧に対応しクライアントの話に耳を傾けて対応し・・・などとやっていると、現実にはなかなか良くならないという圧倒的多数のケースを認めざるを得なくなり、商売が成り立たなくなります。
 矯正所をはじめた頃は純粋にどもりで困っている人のために・・・という気持ちだったとしても、自分や従業員の生活のためにはそういうやり方をせざるを得なくなるでしょう。
これが民間矯正所の限界なのです。

 一方、公的な病院や民間の病院などでは、
どもりで悩んでいる人を積極的に受け入れて家族をも含めて丁寧にカウンセリングし、そして必要に応じて言語治療や、心理的なカウンセリングを行っているかというと、ごく一部を除いてそのようなことは行われていません。事実上ないといって良いでしょう。
*医療保険の制度から吃音者に対して丁寧に対応するほど病院の赤字は増えていきます。同じことがうつ病などのこころの病気についても言えます。

 また、小中学生に対して対して行われている「ことばの教室」も、どれくらいのクオリティ(サポート体制)でどもりを持った子供がサポートされているか分かりません。
日本全国均一に手厚いサポートがされているとは思えませんので、このあたりの全国規模の調査と抜本的な見直しが必要と思われます。
*言語聴覚士の資格を持っていない「普通の先生」がことばの教室を担当していることが行われているようです。ことばの教室では、いわゆる発達障害の子供を受け入れているようなので、専門分野を学び高度に訓練された各専門家が受け持つのがあたりまえのこの領域で混乱が生じていたり、先生方の努力とは別に、結果として質の低いサービスしか提供できていないのではないでしょうか?
ことばの教室は言語聴覚士や臨床心理士や精神科医など、また、それらの領域のスーパーパイザーのサポートを得て専門家が専門的に行うべきです。学校ということで教員免許のありなしのこだわる必要はありません。子供本位に考えれば良いことです。

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