クリニックのシステムになじまない「成人吃音」(再掲載一部改編:2008年6月6日)

日本で言語聴覚士という国家資格ができて10年以上が過ぎましたが、それでは、どもりで困っている方々は、街のなかの「言語クリニック」に、歯医者に通うように気軽に通えるようになったでしょうか?
答えはあきあらかに「ノー」ですね。そもそも言語クリニック自体が街なかにはありません!

まず、「言語聴覚士の資格を持っている方が独立して開業し保険診療できるのか?」という問題があります。
言語聴覚士は医師の指導の下に働く資格であるというイメージがありますが法的にはどうなのでしょうか?独立開業して保険診療ができるのでしょうか?
たとえできたとしても、経済的に成り立つような(生きていけるような)収入が得られるような保健のシステムになっているのだろうか?という問題があります。

まあ、無いものねだりばかりしていても仕方ありませんので、現実に戻ります。
どもりで悩んでいる人、それもかつての私のように、どもりで日常生活や学校生活・仕事上のコミュニケーションに少なからぬ支障が出る場合はどうなのでしょうか?

少しどもるくらいならばともかく、いまいる職場の仕事の流れを遅らせてしまうくらいにどもる場合(つまり同僚に迷惑をかける場合)、
電話をかけるにしても、簡単な用件を伝えるにも時間を要してしまうくらいにどもる場合や、しゃくり上げるように大きくどもり同僚や顧客からクレームがつく場合などは、いくら、「どもってもいいんだ」と思おうとしても、まわりの人たちの迷惑そうな目つきや態度も気になるし、そのような生活を続けていると精神的に参ってしまいます。

そのようなときには、この21世紀になった日本でも、
ネットなどで見つけた「民間無資格どもり矯正所(最近は「のようなもの」の団体も増えて来ました)」しか頼るところがない(と思い込んでしまう)というのが現状でしょう。
*もうひとつの選択肢として、どもりのセルフヘルプグループに通うという方法もありますが、いま、まさに悩んでいる人にとってはかなり敷居が高い存在かも知れません。なぜならば、同じ団体のなかに「どもりとの共存」をうたうグループがあるかとおもえば、少しでも軽くしよう治そうと努力するグループもありまとまりのないものに見えてしまって、ドアをたたくことに不安をおぼえるかもしれません。(どもりについていろいろな考え方があるのは「どもりのベテラン?」からすればよく理解できるのですが、いままさに悩んでいるどもりの初心者にとっては「治る」とか「よくなる」とうたっている方が安心できますしこころ惹かれます。)

最近のどもり矯正所は以前(90年代まで)のものとは違ってきていて、先生と1対1で行なう場合や大勢で集まるセミナー形式のものまでできているようです。
90年代中頃くらいまでは、戦前から続いていた「寺子屋のように授業形式で一緒に受講する形式」が残っていました。

この矯正所の悪い点は言うまでもなく先生の自己流の方法であることにつきますが、唯一良いことは同じ仲間を得られることでした。
仲間ができたら、いちばんの効果は、孤独から一気に解放されることです。
いっそ死んでしまいたいとまで思っていた追い詰められていた人も、そのような思いからはひとまず解放されるでしょう。

仲間ができれば、例えば互いに電話をかけて電話の練習もできますし、仲間で集まっていろいろな状況を設定して練習もできます。(サイコドラマのようなもの)
そして、その後には大いに飲んで騒いで・・・・
そのようなことが、結果としてどもりで悩んでいる人をよい方向に向かわせていたのです。(実はこれがいちばん効果的かも知れません。)
(問題点もありました。メンバー間のどもりの重さや症状に大きな違いがあると、重いどもりを持っている方が仲間のなかで浮いてしまいうまくいかなくなる・・・ということです。)

近い将来に、街のなかに、歯医者に通うような感覚で気軽に通える言語クリニックができたとしましょう。
そのクリニックには週に1回か2回行き、15分くらい話をし、場合によってはそこで多少の言語療法も行ないます。

そのようなことをしたとしても、
かつて私たちがサークル的に行なっていた「お互いの家に日常的に電話をかけ合い電話に慣れる練習をする」、「公民館などで部屋を借りて、学校なら学校、職場なら職場に近い状況を作り出して、ワイワイ言いながら練習をする。」
こんな方法(素人療法)を簡単には凌駕できないのではないでしょうか。
しかし、素人療法ですから注意すべき点もあります。仲間うちの集まりは、所詮、素人集団です。知らず知らずのうちに他人を傷つけたり、自分の考え方を押しつけるような人が必ず出てきます。

それが起きない(おきにくい)のが、治療費を払って通い、専門の資格者の監督の下にいろいろなことが行なわれる「言語クリニック」の良さでしょう。
将来、言語クリニックが街なかにできるような時代が来たら、来院するどもりの患者のために、先生の診断や治療、カウンセリングなどのほかに、かつての吃音矯正所やセルフヘルプグループの良い点を真似して、(上手に管理された)皆が集まれる場所もあると良いと思います。
それは、セルフヘルプグループのものとは違い、「カウンセリング」、「治療」という目的を持っています。そのときに生きてくるのが専門教育を受けている言語聴覚士や臨床心理士の知識なのです。
形としては、整形外科の病院ではリハビリテーションの部門があります。そこには理学療法士がいて大きな部屋でリハビリを行なっていますが、そのようなイメージで行なえば良いのではないでしょうか。

セルフヘルプグループはセルフヘルプグループとして、どもりの人が気軽に集まれるサロンのような安心できる場を提供し、言語クリニックのほうは、専門の先生が医学的・リハビリテーション的な見地から個人ごとにアドバイスができる、このような考え方がよいのではないかと思います。

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