フレデリック・P・マレー著「吃音の克服(A STUTTER’S STORY)」を読みなおす(再掲載:2008年1月)

 お正月(注:2008年1月)に、ブックリストの欄で紹介している「吃音の克服」(A STUTTER’S STORY)を読みなおしてみました。

 この本には、子供の頃より重症のどもりで苦労された著者の心情の変化が率直に書かれています。
青年期以降には言語病理学をこころざし各大学で学び、どもり専門の言語病理学教授になるのですが、偏りのない、そして、専門家でなくてもわかる平易な文章で書かれていますので、どもりのお子さんを持つ親御さんや、いまどもりで悩んでいる方々に是非読んでいただきたい一冊です。

 ネット上にはさまざまなどもりに関する情報があふれていますが、この本はそれらのスタンダードに位置する、そして素人でも十分に読める本です。
邦題は「吃音の克服」ですが、原題(A STUTTER’S STORY)のほうが、この本の内容をよく表しているように思います。

 著者は、この本が書かれた時点ではニューハンプシャー大学の言語病理学教授で、どもりを専門に研究されてきた方です。(今年83歳になられるはず・・・)
20年前に初めて読んだ時は一気に読んでしまうほど興奮しました。

 過去に大きな書店や公共の図書館で見つけた「日本の専門家?」と言われる方の書いた吃音に関する本は、どれも外国の文献からそのまま持ってきたような説明の羅列か、実例(カウンセリングや治療の臨床例)にしてもほとんどが学齢期の子供でした。
 実際に自分で動いて、新しい考え方、新しい治療法を開拓するというのではなくて、吃音の査定法の研究や、おもにアメリカで研究された治療法の検証的な研究に終始しているだけなのです。(私にはそう思えました。)

 話を戻します。
著者が子供のころと言えば、1930年代です。
 アメリカでは、すでにアイオワ大学でどもりの研究が活発に行われていました、(日本では巷に腹式呼吸による民間矯正所がいくつかあったはずです)、そんな時代の話です。
そのころからすで街には言語クリニックが存在し、治療費を払って通っていたフレデリック少年が出てきます。治療法は、精神分析的な療法、直接の言語療法、です。
言語障害や心理学を学んでいる学生を自宅にまで招いて治療している様子も描かれており、両親もかなり心配していたことがうかがわれます。(家庭は比較的裕福で、どもりにはかなり神経質になっており、吃音をおおらかに受け止めるというよりも、どもりはよくないものという受け止め方のようです。)
 いろいろと試してはみるもののどもりの症状はいっこうに改善されず、一時的に良くなったかと思えば、なにかのきっかけで(またはきっかけもなしに)重症のどもりがぶり返すのは、よくあるパターンですね。

 その後スタンフォード大学やアイオワ大学など複数の大学で学び吃音を専門とする言語病理学者になりますが、彼がこの本で結論的に言っているのは、「吃音は器質的な基盤があると思う」ということです。

 どもりを持っている方で知的好奇心の強い方は、ご自分で内外の言語病理学の専門書をあさったりするでしょうが、
現在はネットでも容易に検索される、大脳半球優位説やDAF(聴覚遅延フィードバック)の理論は、20世紀の前半か中頃からすでに盛んに研究されていることがこの本を読むだけでもわかります。
皆さんもぜひ読んでみてください。

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